Bruise Claw

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Bruise Claw<ブルーズクロー>第1話

投稿日:2024年6月22日 更新日:

Bruise Claw<ブルーズクロー>第1話

”よくぞ最下層まで辿り着いた。

君は紛れもなく一流のトレジャーハンターだ。

だが、残念だが少しばかり遅かったようだ。

七刃魔剣は私が頂いた。 冒険王ファリス・ナーシス”

 

「~~~~~ッ!!!

 ざっけんなよクソがぁあああああああああ!!

 

「・・・落ち着けよラキット、余計に腹が減る・・・」

 

「逆にお前はよく落ち着いてられるなアーマス!

 お宝がなかったんだぞ!?B級ランクのダンジョンとはいえ、

 地下何階だっけ!?とにかく50階近く降りてきてこれかよ!?」

 

冒険王ファリスの嫌がらせの置手紙をビリビリに破りながら地団駄を踏むラーキス・・・

相棒のアーマスもラキットの気持ちは痛い程解っていたが、

すでに疲労と空腹で怒鳴る気力を失っていた。

 

「このファリスって野郎・・・嫌がらせのつもりなのか、途中の宝箱には目もくれず

 あたかも誰も挑んでないかのように装いやがって・・・!!

 それが余計に腹立つ・・・なぁにが冒険王じゃ!!ヴォケェ!!」

 

「なかったもんはしょうがねぇだろ・・・

 俺はもう腹が減って一歩も動けん・・・

 ラキット、『風ネズミのしっぽ』使ってくれ」

 

「・・・ぇよ・・・」

「ぁ?なんて?」

 

「だから、ねぇよ!!そんなモン!!」

「はぁ!?なんでねぇんだよ!?

 ダンジョンに挑むのに、最低一個は持っとく必需品だろ!?

 何年冒険者やってんだよ!?」

 

空腹でも流石にこれは許しておけなかったアーマス。

 

”ダンジョンに潜るなら『風ネズミのしっぽ』は最低1個は所持すべし”

 

冒険者の心得として、駆け出しですら知ってる常識である。

 

「バカにすんなよ。いくら俺だって、そんくらいの常識はわかってら」

 

得意げな顔をする程の事ではない。

 

「じゃあ、なんでないんだよ!?」

 

「・・・落とした

「あぁ!?なんて?ちゃんと言えよ!?」

 

「だから、落としたって言ってんでしょーが!!

 はい!もうこの話終わり!!」

「おと・・・いや、勝手に話終わらせてんじゃねぇよ!!

 このポンコツ・・・!!」

 

「うわ!ひっでー、誰にだってミスの一つくらいあるでしょーが!

 それに、そんだけ元気あるなら全然徒歩で戻れるだろ!」

 

「・・・・!!!~~~~はぁ・・・どっと疲れた・・・

 俺ぁもうここを動かんぞ、お前ダンジョン出て、

 風ネズミのしっぽとってこいや・・・」

 

「お前流石に最低だろ」

 

どっちもどっちである。

 

「わかった、じゃあジャンケンで決めようや。

 俺が勝ったらお前は素直に町まで風ネズミのしっぽとって来い。

 お前が勝ったら、諦めて歩いて帰る・・・」

 

「こいつメチャクチャだな・・・

 まぁいいや、じゃあ恨みっこ無しだぜ!?」

 

『ジャンケン・・・ポン!!

 

・・・・・

・・・

 

という事で、二人はもと来た道をひたすら引き返し、3日で地上にたどり着いた。

空腹を何とかすべく、ダンジョン内で狩りをするも、空腹による体力低下など

諸々の要因で中々上手くいかず、無駄に時間がかかってしまった。

 

道中、二人の仲は険悪になるものの、ダンジョンを出る頃には普段の二人に戻っていた。

 

「まったく今回は最悪だったな」

「早く宿に行こうぜ・・・もうクタクタだぜ・・・」

 

二人が挑戦していたB級ダンジョン『剣王の修業場』

ここから東に10kmほどで小さな町『タマス』がある。

 

二人が本調子であれば、走って10分くらいで着く距離だが、

今の疲弊した二人では徒歩で2時間ほどか・・・

オマケに途中、魔物と遭遇すれば、それ以上かかる事は間違いない。

 

「だりぃな・・・やっぱゼファを連れてくるべきだった」

 

ゼファ・チェイニ、魔法使い。

転移術もお手の物、それ故ダンジョンからの脱出はもちろん、

洞窟から町への移動も非常に楽なのである。

 

アーマスがゼファを連れてこれば・・・と言っていたのは、

もちろん転移術目当てである。

 

「あいつはティアのパーティだしな・・・

 そう都合よく連れまわせないさ。

 あともうちょっとだろ、ぼやくなよアーマス」

 

「俺らも魔法使いスカウトしようぜ・・・

 実力云々はどうでもいいから、転移術使える奴をよ」

 

「んな足目的の仲間とか・・・お前酷いな・・・

 だいたい普段から体力オバケのくせして、

 今日は随分へたってるじゃねぇか・・・」

 

「教えてやろうか?そりゃ、まともなモノ食ってないからさ」

 

現地調達のダンジョン飯・・・二人とも料理スキルがイマイチなため、

お世辞にも旨い飯とは言えない・・・ただただ腹を満たすだけの料理・・・

おまけに栄養価も決して高いとは言えないため、体力は回復には至っていない。

 

「へいへい、悪かったな。

 じゃあ料理の一つも出来るようになったらどうだ?」

「そうだな。使えない団長がいると下は苦労するぜ」

 

「あぁん!?そいつぁ誰の事だ!?」

「オメェだよオメェ!!」

 

このいさかいで、さらに体力を奪われる結果に・・・

 

・・・・

・・

 

【タマスの町】

 

結局、2時間かかるところを、余計な喧嘩で消耗し、3時間かかってしまった。

 

「やっとついた・・・」

「とりあえず宿・・・飯ぃ・・・」

 

「ちょ!?二人ともどうしたの!?そんなボロボロで・・・」

 

街の入り口で二人が出くわしたのはミリシア・オーレシア。

この町を拠点に冒険者を生業にしている少女だ。

密かに・・・というか、結構わかりやすくラキットに好意を寄せているが、

当の本人はまるで気づいていないようだ。

 

「ようミリシア・・・ざまぁないぜ、コイツのせいでえらい目にあった」

 

あれだけやりあってまだ根に持っているとは、アーマスはかなりの粘着質である。

 

「もういい・・・好きに言ってくれ、言い争う気力もねぇよ。

 ちょっくら宿で休ませてもらうわ・・・じゃあなミリシア」

 

「あ、うん・・・あ、あ・・・行っちゃった・・・」

 

食事に誘いたかったようだが、いつもこんな調子である。

 

【タマスの町/宿屋】

 

「らっしゃい・・・って、ボロボロだな二人とも」

「オヤッサン、ひとまず寝るわ・・・」

 

二人もミリシアと同様、この町を拠点にすでに数か月活動をしている。

そのため、月単位で部屋を借りているわけだ。

金の問題もあって、同部屋なわけだが、普段は気にならないもの、

今日は激しく別の部屋であればと思う二人だった。

 

結局二人は何も言葉を交わすことなく、

風呂にも入らずにベッドにダイブした。

 

そして夜が明けた。

 

・・・・・

・・・

 

「くぁ~・・・よく寝た・・・って、アーマスの野郎いねぇな」

 

アーマスは空腹で目が覚めたようで、先に食事に向かったようだ。

まだ腹を立てているのだろうか?

 

「おやっさんおはようっス」

「おはようさん。相棒はとっくに出ていったぞ?」

 

「ウッス、酒場っしょ?」

「多分ね」

 

ラキットも酒場に向かった。

 

【タマスの町/酒場】

 

「?・・・なんか妙にざわついてるな・・・まだ朝だろ?」

 

朝の酒場には珍しく人だかりができている。

 

「!!」

 

ラキットの表情が一瞬にして強張る。

理由は明白だった。

人だかりの中に”奴ら”がいたからに他ならない。

 

「お、噂をすれば・・・よう兄弟、久しぶりだな」

「エンド・・・!!」

 

エンドと呼ばれた赤髪の男、その取り巻き4人・・・

ラキットにとっては馴染のある顔ぶれだった。

 

「そう怖い顔するなよ。探してたんだよ」

 

「アーマス!!」

「大丈夫だ、何もされちゃいねぇよ」

 

「おやおや、俺を無視してお仲間の心配とはね・・・

 なんかちょっとショックだな」

 

「”牙”の団長が部下なんか引き連れて、この田舎町に何の用だ」

「何の用だ・・・って、だからお前を探してたんだよ兄弟」

 

「俺を兄弟なんて二度と呼ぶんじゃねぇよ・・・殺すぞ」

「よく言う。それが出来ないのはお前が一番理解しているくせに」

 

エンドはラキットに近寄り、彼の顔に自身の顔を近づけた。

 

シュッ!!

 

瞬間!凄まじい速さでラキットはエンドの顔面に向けて拳を走らせるも、空を切った。

 

「フフ・・・怖いなぁ。お前本気だったろ?」

「・・・チッ!!」

 

「とりあえず落ち着こうぜ。何も戦争しに来たわけじゃないんだ」

「そうかい?言ってる事と、テメェらから発してる殺気・・・

 全然あってないんだが?」

 

アーマスが口を挟んだ。

 

「君が”ブルーズクロー”の団員クンだったね。

 確か・・・そうそう、アー”ム”スだっけ?」

 

「アー”マ”スだ。つーか、マジで喧嘩するつもりじゃねぇなら、その殺気をやめろ」

「あの血の気が多くて有名な戦闘民族のグラッド族様が、

 この程度の殺気にイチイチ障ってんじゃねぇよ。”アナグラ”が」

 

ブンッ!!!

 

再びラキットが殴りかかるも、またも空を切った。

 

「手が速いのは相変わらずだなラキット」

「これ以上、仲間を侮辱するんじゃねぇよ・・・マジで殺すぞ」

 

「落ち着けラキット、ここじゃまずいだろ。

 何でお前がキレてんだよ」

「・・・別にキレちゃいねぇよ!」

 

「わーったよ。これじゃマジで話にならねぇし、アーマス君に免じて抑えてやるよ」

 

5人から殺気が消えた。

 

「これでいいだろ?あと、アナ・・・おっと、また殴られそうだ。

 差別用語を口走って申し訳なかったね」

 

「気にしちゃいねぇよ。とりあえずここは酒場だ・・・

 なんの関係もない一般人を巻き込むような真似はやめてくれ」

 

「・・・だな。俺たちも大人気なかった。申し訳なかった。

 お詫びの印に皆に一杯ご馳走させてくれ」

『おーーーー!!』

 

これには何も知らない客たちはテンションをあげた。

 

「じゃあ、あっちの空いてる席で話そうか」

「・・・わかった」

 

次回に続く

 

2話以降は完全版は有料販売です!(110円(販売開始1か月は半額))

 

■次回

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